「くっそ……っ!」
何度ぶっ叩こうがウヨウヨ湧いて来やがる標的がまどろっこしい。
しかもなかなか手こずらせやがるしでマジでやってらんねぇ。
「アイゼンッ!」
チマチマやってても埒があかねぇ!まとめて一気にぶっ潰す!
「ラケーテンハンマーッ!!!」
目に付く限りの敵を薙ぎ払う。が、叩き損ねたヤツらが攻撃をして来たのが見えた。
「チッ…!」
こっちはバランスが今取れねぇんだ。
やられるッ―――!
《Sonic Move.》
思わず目を瞑ったところにその機械音が聞こえて、爆発の音が遠くでしていた。
「…ぁ…?」
「大丈夫?ヴィータ」
見上げるとそこにはテスタロッサが居た。ていうかなんであたしを抱きかかえていやがる…!
「ぉっ、おいっ!」
「ごめんね。もう少ししたら着地するから。それまで大人しくしてて」
「跳べるっての!」
「良いから良いから」
こいつは別件で出てて、帰り掛けにこっちの任務に合流することになって、他んところで敵と闘ってた筈だ。
ここに居るってことは、ソイツら全部倒してきたのか…?
「っておいッ!お前目ぇどうしたッ!?」
「ん?あぁこれ?開いてないけど別に見えないとかじゃないよ?
ちょっと頭をやっちゃってね、流れた血が入っちゃっただけなんだ」
別に問題ないよ?とかすっげぇとぼけた事をぬかしやがる…。
「問題ありまくりだろうがッ!」
「ヴィータの怪我の方が問題だよ」
そんなやり取りをしているうちに地上に降り立つ。直ぐにテスタロッサの腕から逃げ出したが、自分で思ったよりもガタが来てたのか体がなんかフラフラした。
「っと、ほら危ない」
「っせーよっ。こんなん怪我の内にも入んねぇよ」
「立派な怪我だよ。大怪我だ。立ってるのだってやっとじゃないか」
テスタロッサにトンッと肩を押されただけでその場にへたり込んだ。
…確かに体中色んなとこから血は出てるしズキズキする。魔力だって無駄に消費し過ぎたかもしれねぇ。けど
「…あたしはまだやれんだ。やらなきゃならねぇことがあんだよ…っ」
そう、今回の作戦であたしには任されてることがある。…くだらない意地かも知れないが、任された以上はやり遂げなきゃ申し訳が立たない。
「分かってる。ヴィータは騎士だからね。どんなことであっても誇りを捨てない。だから何としてでもやり遂げたいって思うんだ。
でも、ヴィータはもう充分頑張った。これ以上無理すると、他のみんなが心配する」
「…ッ」
「ヴィータ。
…堪えることも、大事なことなんじゃないのかな…?」
テスタロッサの言葉は重かった。
どっかしらで焦っていたような気持ちが、その言葉で宥められていくような気がした。
「…………わりぃ」
「分かってくれたなら、それで」
テスタロッサは直ぐに通信を開き、あたしの状態を医療班に知らせた。
聞いてると随分と大袈裟な感じだったけど、こいつがそう言うぐらいにはきっと酷い状態なんだろう。あたしは。
「…もうちょっとで医療班が来る。ここなら標的にも見つかりにくいだろうから暫くはここに居ると良いよ」
「お前もいんだろ?」
あたしのことを言うより、テスタロッサだってそれなりにヤバイ怪我をしている。
チラッと見えただけだが、通信に出たシャマルが青い顔をしてたぐらいだ。
テスタロッサは無言であたしの顔を見ると、振り返ってあたしたちが跳んできた方へと視線を投げる。
「テスタロッサ…?」
「ねぇ、ヴィータ」
もう一度こちらを見たテスタロッサの表情から、あんまり良くない予感を感じた。
「…なんだよ?」
薄く笑みを浮かべて、そいつは言った。
「…ヴィータが任された役割。私が引き継ぎたいんだけど、詳しいことを教えてくれないかな?」
…コイツ…正気かよッ!?
「バッ…!お前ッ、何言ってんだよッ!!」
「言葉の通りだよ。私はただ途中で駆け付けただけだったからね、この任務の詳しいことは知らないんだ。それだと色々不便でしょ?」
「そんなこと言ってんじゃねぇよっ!お前だって怪我してんのに何やろうとしてんだって話だよっ!!」
「『怪我のうちにも入らない』」
「…ッ!!」
「少なくとも、ヴィータよりは私の方がまだ動けるからね」
…確かに、あたしは叫ぶ度に体のあちこちが悲鳴をあげるみたいに痛い。
つか、そもそもこいつが変なこと言わなきゃ良いだけの話じゃねぇかっ?
「ヴィータ」
「ぁあッ!?」
「…ヴィータがその状態であってもやり遂げようと思ったってことは、きっとそれ程までに任された役割は大きいってことなんだろうね。それも、この作戦の遂行を左右するような。
…その大事な役割を欠かしてしまうことは出来ないよね。でも、今、この瞬間にそれを担うことが出来るのはこの場に居る私達だけだ。
…この意味、分かるよね?」
「……ッ…!」
「ヴィータの悔しさを晴らして来るよ。
それに、作戦も完遂させる」
―――そういや、こいつには口で勝てる気がしないって、誰か…言ってたな。
「…ッ、けどっ―――」
「『けど』じゃない。
早く…話すんだ」
あたしをじっと見てくる瞳が凄く力強くて、
…そのままあたしは、口を割ることしか出来なかった。
「…なるほど」
一通り話し終えるとテスタロッサはそう言った。
それから間もなく、そんなに遠くないところで何かが爆発するような轟音が鳴る。
「なんだっ!?」
「探しに来たのかな、なんか大分集まってるみたいだね。…まぁでも、作戦にはお誂え向きだ」
テスタロッサは未だ血が流れている箇所を袖で拭う。…確かに目がどうこうって訳じゃねぇみたいだが、血が止まってないってのも事実だ。
「じゃあ…ちょっと行ってこようかな」
バルディッシュにカートリッジを装填させた後、奴は白マントをはためかせて飛び立とうとする。
「…あぁ、そうだヴィータ」
「ぁ?」
「…直になのはがこっちにやって来るらしいよ。今念話が来た」
………これから重要でしかも危ない橋を渡ろうとしてる奴がこんな笑顔で良いのかよ…。
まぁ…コイツには良い刺激なんだろうがな。
「なのはに宜しく言っておいてね」
「ハッ。おめぇの無茶っぷりを余すことなく伝えといてやるよ」
「…それは勘弁して欲しいな」
《Sir.》
「…うん。そろそろ行こうか」
テスタロッサの体が宙に浮く。
「………オイッ!」
「うん?」
「………死ぬんじゃ、ねぇぞ?」
「―――…ごめん。
寝言は聞こえない耳なんだ」
…間もなくテスタロッサの姿は見えなくなった。
「……“寝言”かよ」
冗談なのかなんなのか知らねーが、こんな状況でああいうのを聞かされたりするとつくづくアイツには勝てねぇなって気がしちまう。
(…アイツが負けんのはここに来てるってやつぐらいか)
そう思ったところで、なんていうか、腹がいっぱいだ。勘弁して欲しいぐらいだぜっていう気になった。
―――そうだ。お前が負ける訳はねぇんだ。
だから…無事に帰って来いよ
…テスタロッサ。
―――遠くに、金色と桜色の光が見えた。
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あ、あれなのはちゃんそっちに行きました?
…なのはちゃんは、何があろうともフェイトちゃんを優先するんです(ちょw
さて、お読み頂いて分かって頂けたとは思いますが…今回はなんとヴィータ視点の物語です!
テスタロッサ&ヴィータのコンビってスゴく良いと思うのです!(拳ぐっ
シグフェ・なのヴィが鉄板かと思われますが、私は敢えて道を逸れてみました(笑)
なんていうか意外と書きやすいですヴィータさん!結構ストレートに表現する感じの方ですから変に言い回しとか考えずに済んだので楽でした(でもところどころ言い回しが変だったりするのは紛れもなく作者の癖です(((
フェイトさんのキャラがまぁいつもの感じとはちょっと違いますが、これは『ヴィータさんの前ではこんな感じだったら俺得w』っていう要素を詰め込みました。
なんか二人には、悪友めいた感じの関係で居て欲しかったんです(笑)
きっとなのはさん絡みだとなんやかんやで話が盛り上がるのでしょう!いえ、あくまでもなのフェイなの+ヴィータの関係ですが(ぁw
…余談ですが、SS内の“敵”はガジェットでも魔獣でもお好みでご想像して頂きたく思います(蹴
後“作戦”とか“役割”とかはきっとヴィータがおびき寄せる役だったりとかで集まった敵を一気に殲滅!!…っていう話だったんだと思います←
…ぐだぐだorz!!(脱兎
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