もういい加減認めればいいよ

くだらない常識なんかでは計れないものがあるはずだって

そもそも蒼空を跳べる私達に“常識”の概念がまるで当てはまってないじゃない
世間一般に通ずる共通認識が常識だっていうなら私達は完全に“逸脱者”だ

魔法なんて非科学的。そういうことでしょう？

…自分がもつ力を無視して“常識”を振りかざす、それって結構な矛盾だよ


―――ここまでのことを相手に口を挟ませないように一息で言い切った。目の前の人物は呆気に取られたような困惑したようななんともいえない微妙な顔で小さく口を開けたまま眉根を寄せる。…誇張がすぎたかもしれない。さっきの例えは。“常識が如何に馬鹿げたものなのか”を示すために口を開いたのは数十秒前。気がつくと口の中がカラカラだった。水が欲しい。


…私はそもそも此方の世界の人間だから、そりゃあ小さい頃は魔法なんてアニメとかマンガの世界の中だけだって思ってたよ。まさか自分がそんな御伽噺の中にみたような力を手にすることになるなんて思わなかった。あ、…言っておくけどそのことに後悔したぁ～とかそんなことを言いたいわけじゃないからね？私が言いたいのは、そうやって知らず知らずのうちに私の中に染み着いていた“魔法は普通の人には使えない”っていう“常識”がそうやって簡単に塗り替えられてしまったんだよっていう経験談だから。

…そんなだから魔法が使えることが既に私の中では常識だけど、此方の世界ではそれが常識じゃない。でも…そんなのはなにも魔法に限ったことではないでしょ？

防犯のために鍵を掛けることは常識だけど、中には掛けない人もいるでしょ実際には。忘れっぽいだけなのかもしれないけど、自信を持って“これが私の常識だ”なんて言われた日にはそれはもうその人にとっての常識だって話になっちゃう。…常識だなんて言っても結局はそんなにも脆いんだよ。自信をもって言い切っちゃえば常識なんて、いくらでもいくらでもつくれちゃうんだよ。それを共有する人がたまたま莫大な数いるだけなんだよ、“防犯のために鍵を掛けましょう”なんてものは。


「…だから、さ」


“女の子が女の子を好きになっちゃいけない”なんて常識は本当にくだらなくて守る価値も希薄であまりにも脆すぎるものだと私は思ってるよ。悪いけど

…好きなことに正直になって何が悪いの？そもそも好きなものは好きっていっちゃいけないなんて“常識”、あったっけ？…みんなそんなこと考えてないよね、好きなことを好きって言っているじゃない。寧ろ好きは好きっていうことが当たり前で、当たり前ってことは常識と同じじゃないの？

…じゃあ、なんで女の子を好きになっちゃいけないの？好きなものを好きっていっていいのに。…なんでそれは駄目なの？そんな矛盾を認めて、本当にいいの？


「…私は嫌だよ。そんなの」


そんな矛盾した“常識”なんて常識と呼びたくないし、そんなものに縛られるのも嫌。…魔法が使えるのに、それで護れるものがあるはずだって思うのに、此方の世界では常識外だから使っちゃいけませんって言われてしまうことみたいに嫌。…私は好きなものに胸を張っていたいだけなのに。好きなことに胸を張ることは誉められるべき美徳なのに、その対象によっては矛盾した常識なんてものに制限をかけられてしまうことが嫌。

…だから私は私の中の常識を振りかざすんだよ。矛盾した“世間一般の常識”の概念の中に私が私の為だけに新たに作り出した“私だけの常識”の概念を振りかざして我が物顔で闊歩するんだよ。


「好きなものは好き、好きな人が好き
だから私は愛したい人を愛す。
…だから目の前の誰よりも愛おしい人を愛す
私は自分と同じ女の子という性別の人を心から愛すんだよ」


それが私の常識なんだから。


…常識なんて脆いけど
自分が作り出した常識なら胸を張って護っていけるし

頑固さなら負けないし
後ろ指指したいならどうぞって感じもあるし

…だって、幸せならさ、…それでいいんじゃないの？


「好きなものに胸を張れるって幸せじゃない。対象はなんであれ」


そう、…対象はなんであれ、だよ。




















…だって彼女が言ったから

「私は好きになってはいけない人を好きになったんだ」って

問いただしたら“それが常識だから”って

…だから私は“常識の脆さ”を高らかに謳い、そんなものに縛られる必要なんてないんだって言い切った。

そして常識を作り出して、彼女にそれを知らしめたんだ。

どんなに無茶苦茶な暴論だって構わない。支離滅裂だって良いじゃない。…それで幸せになれるなら、

良いじゃないか。


「…だから、さ、」


認めてくださいな

私のこんな、あまりにも身勝手でふざけまくりでおざなりで稚拙で甘い綺麗事だらけで子供じみた空想
―――…だって“世間一般の常識”が如何にも我が物顔で薄ら笑いを浮かべながら後ろ指を指してきそうなこの私の“常識論”を。


認めて素直に言って欲しいよ。

「私もなのはが大好きだよ」…って。



くだらない常識を壊そうよ。

私の常識を護ってよ。




















幸せになろうよ。


【こうふく論】



無茶苦茶論理に丸め込まれて。

今すぐに


それを幸福と言い切ろうよ。



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破綻論理に降伏を
無理が通れば道理が引っ込む。

一貫性なんて知りません
だって暴論なんですから(キリッ